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愛犬が腎臓病と診断されたら、必ず食事制限が必要になります。
多くの場合、動物病院で腎臓病用の療法食を処方されますが、腎臓病のドッグフードはタンパク質・リン・ナトリウムが制限されています。
そのため、通常のドッグフードに比べて薄味になりがちな腎臓ケアドッグフードは犬の食欲をそそりにくく、なかなか食べてくれないこともあります。
この記事では、腎臓病ケアドッグフードを選ぶ際のポイントや、おやつ・トッピングにおすすめの食材について紹介します。
なお、その他の食事管理については【犬の食事カテゴリー】をご確認ください。

Index
犬の腎臓病とは?

犬の腎臓病は病気の進行にかかった時間により、「急性腎障害」と「慢性腎臓病」に分けられます。
ここでは、急性腎障害と慢性腎臓病について詳しくご紹介します。
急性腎障害
急性腎障害は、わずか数時間から数日間という短い時間で腎臓の機能が一気に低下します。
急性腎障害の原因
- 細菌感染・ウィルス感染・免疫疾患などによる腎炎
- 食材・化学薬品・薬物などが原因の中毒
- ケガ・心不全などによる腎血流量の著しい低下
- 尿路結石などが原因の尿道閉塞
急性腎障害の症状
- おしっこをしない、あるいはおしっこをしても量が極端に少ない
- ぐったりして元気がない
- 意識が低下し、反応が鈍い
- 食欲がない
- 嘔吐・下痢
重症化すると痙攣・体温低下・電解質異常が起こり、最悪の場合は死に至ることもあります。
電解質とは:ナトリウム・カリウム・カルシウム・リンなど、体の様々な働きや正常な状態を保つために必要な物質のこと。
急性腎障害の治療
急性腎障害を引き起こした原因の治療と、腎臓を保護するための治療を同時に行い、腎機能を回復させます。ただし、回復後も腎機能が完全に戻るとは限りません。
慢性腎不全に移行する可能性もあるため、迅速かつ的確な治療が求められます。
慢性腎臓病
慢性腎臓病は、長い年月をかけて少しずつ腎機能が低下していくことにより発症します。
7歳を過ぎたあたりから発症率が上がり始めるため、慢性腎臓病を患っている犬の多くが10歳を過ぎた老犬(シニア犬)です。
慢性腎臓病の原因
- 老化による腎機能の低下
- 他の疾患による腎障害
- 自己免疫疾患
- 遺伝的な要因
- 腫瘍
急性腎障害とは異なり、慢性腎臓病は原因が早期段階ではっきり特定できないケースが多いのが特徴です。
慢性腎臓病の症状
- 体重が減少し、痩せてきている
- 食欲が落ちている、あるいは食欲がない
- いつもより水をたくさん飲む
- 色の薄い水のようなおしっこを大量にする
- 頻繁に嘔吐している
- 口臭がきつくなった
- 便秘ぎみ
- 被毛がパサついている
慢性腎臓病の治療
腎臓の機能をまかなっているネフロンは、障害を受けて機能を失うと再生することはありません。
そのため、慢性腎臓病の治療は「残っている腎機能をいかに温存するか」が重要なカギとなります。
- 食事を腎臓ケアドッグフードに変える
- リン吸着剤でドッグフードに含まれているリンを積極的に制限する
- ヘルスカーボンで老廃物のもとになる物質を吸着し排出させる
- 腎臓の血管を広げるACE阻害薬を服用させる
- 脱水がみられる場合は皮下輸液を行う
慢性腎臓病は治らないため、上記のような対症療法を生涯続けることが必要です。

腎不全腎臓病の犬のドッグフード選びの5つのポイント
腎臓病を発症した犬の食事は、機能が低下している腎臓に出来る限り負担をかけないよう配慮しながら、体力維持に必要な栄養と腎臓機能を応援する成分がしっかり摂取できることが必要です。
ポイント1:良質なタンパク質が体調維持に必要な量に調整されている
タンパク質は犬にとって最も重要な栄養素ですが、摂取すると分解の過程で老廃物(窒素)と腎臓内の毛細血管を硬くする成分(インドキシル硫酸)が生成されます。
血液中の老廃物は本来腎臓でろ過されますが、腎機能が低下している犬の腎臓ではこの機能が衰えています。健康な時と同じように老廃物を尿中に排出できないため、タンパク質の制限が必要です。
ただし、タンパク質は犬の体を構成するすべてのもとになる大切な栄養素です。完全に排除するわけにはいきません。
そのため、腎臓病ケアドッグフードには「体内で分解しやすく老廃物を生成しにくい良質なタンパク質が、過剰にならない量で配合されている」ことが重要です。
ポイント2:リンの含有量が制限されている
リンは骨・歯・核酸(DNA・RNA)・細胞膜などを作るために必要な成分で、カルシウムと結びつく性質を持っています。
本来、過剰なリンは腎臓がろ過して尿中に排出しますが、腎臓病の犬は腎機能が低下しているせいで正常に排出できません。すると高リン血症を引き起こしてした体はリンの濃度を保とうと、骨からカルシウムを取り出してしまいます。
その結果、骨がもろくなるだけではなく血液中のリン酸カルシウムが腎臓内の血管に沈着し、腎機能の低下を招いてしまうのでリンの制限が必要です。
ポイント3:ナトリウム(塩分)が適切に調整されている
腎機能が低下すると、余分な塩分(ナトリウム)と水分の排出が充分にできなくなり、血流量の増加で血圧が上昇しやすい状態です。
すると腎機能の低下によって硬くなっている腎臓内の末梢血管の抵抗が大きくなり、腎臓に負担をかけることになります。
また、腎臓には血圧を調節するホルモンに欠かせない酵素を作る役割があり、腎機能が低下すると血圧を調節する機能そのものが衰えがちです。
ただし、ナトリウムは生きるために欠かせないミネラルのため、塩分量が多すぎず少なすぎずの適量に調節されているドッグフードが望ましいといえるでしょう。
ポイント4:抗酸化物質が配合されている
オメガ3脂肪酸、DHA、EPAなどの抗酸化物質には、「血管を柔らかくし血流を改善する」「炎症を抑制する」「便秘の改善」といった効果が期待できます。
残された腎臓の機能を守るためにも、抗酸化物質が配合された腎臓ケアドッグフードを選びましょう。
ポイント5:食物繊維が配合されている
食物繊維は善玉菌のエサになるため、便秘になりがちな腎臓病の犬のお腹を応援してくれます。
老廃物(窒素)の排出を促すのはもちろん、腎臓内の血管を硬くするインドキシル硫酸を直接吸着して排泄する効果が期待できます。
腎臓病の犬の体内に蓄積しやすい老廃物をスムーズに排出するには、食物繊維が配合されている腎臓ケアドッグフードが望ましいといえるでしょう。
腎臓病の犬におやつを与えてもOK?おやつ選びのポイント

愛犬が腎臓病を発症したからといって、完全におやつNGというわけではありません。
あれもダメ、これもダメでは愛犬のQOL(生活の質)が下がってしまいますし、何より愛犬から食べる喜びを奪いたくないですよね。
ただし、健康な時と同じ種類・同じ頻度でおやつを与えるわけにはいかないため、飼い主さんによる適切なコントロールが必要です。
腎臓病の犬におすすめのおやつ
- 腎臓病に配慮した市販のおやつ
- 蒸したさつまいも
- りんご
市販のおやつは袋に記載されている1日の目安を厳守しましょう。
また、サツマイモ・りんごといった手作りのおやつは、「ほんの少し」が基本です。
腎臓ケアドッグフードの栄養バランスを崩さないよう、与える量は充分に注意してください。
カリウムの多い果物
バナナやメロンはカリウムが多いため、腎臓病の犬のおやつには向きません。
カリウムを充分に排出できないと、心停止や不整脈のリスクが高まるからです。
トッピングの食材は低リン・低タンパク質が基本
腎臓の数値が悪化すると、それまでは食欲旺盛だった犬も食欲が一気に落ちることは珍しくありません。
少食が続くと筋肉が衰え、血流の悪化によって腎機能がさらに低下してしまいます。
本来は栄養バランスが崩れないよう、腎臓ケアドッグフードのみを食べさせることが望ましいですが、どうしても食べない場合はトッピングを加えるなどして、食が進むような工夫をしてあげましょう。
- 腎臓ケアドッグフードはドライタイプとウェットタイプを取り混ぜる
- ブロッコリー・さつまいも・キャベツなどの茹でたものをトッピングする
- りんごのすりおろしをドッグフードにかける
- 白米をドッグフードに加える
腎臓病の犬は偏食が強くなる傾向にあります。そのため、食べてくれそうなものをいろいろ試す必要がありますが、トッピングに使う食材の基本は「低リン」「低タンパク質」です。
リンが多く含まれているチーズ・肉・魚といった食材は、トッピングに向いていません。また、生野菜や野菜のゆで汁にもリンが多く含まれているため、野菜はゆでこぼしが基本です。
愛犬が喜ぶ腎臓ケアドッグフードを見つけよう

犬の腎臓ケアドッグフードは、機能が低下してしまった腎臓を保護するための栄養バランスで作られています。
そのため、腎臓ケアドッグードと水だけの食事が闘病においては理想ですが、それだけでは愛犬の毎日が味気ないものになってしまうかもしれません。
腎臓病の犬は食べたり食べなかったりと食欲にかなりの波があります。療法食もいくつか種類を試し、愛犬の好みのドッグフードを見つけてあげましょう。
なお、その他の食事管理については【犬の食事カテゴリー】をご確認ください。


過去にブリーディング、ドッグショー、犬の飼い方相談を中心にインターネットペットショップ店長として東奔西走。これまで一緒に過ごした愛犬は、ジャーマンシェパード、フラットコーテッドレトリーバー、柴犬、北海道犬、イタリアングレイハウンド、ミニチュアシュナウザー、パグ×パピヨンのMIX。現在は13才のMシュナウザーとともにペット関連中心のライターとして活動中。

うちのトイプー開発責任者。犬の管理栄養士、愛玩動物救命士、ペット看護士資格、ペット介護士資格、ペットセラピスト資格、ドッグトレーニングアドバイザー、ドッグヘルスアドバイザー、その他上級食育士、アレルギー対応食アドバイザーなど、数多くの資格を保有。過去にドッグトレーナーとして働き、現在は愛犬ゴールデンレトリバー、ドーベルマン(元保護犬)、ボルゾイ、ボーダーコリー、愛猫3匹と暮らす。愛犬バーニーズマウンテンドッグの腫瘍発覚後から、長年の間犬の生物学を学ぶ。