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手作りドッグフードの配分は?栄養バランスに注意!【犬の管理栄養士監修】

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犬を家族の一員として大切にするようになった近年、犬にも「安心・安全で愛情のこもった食事を」と、手作りドッグフードを作る飼い主さんが増えてきています。

しかし、基本を知らずに犬に手作りご飯を作るのは非常に危険です。手作りドッグフードでは不足しやすい栄養素があり、食材の管理や調理もより一層注意が必要になります。

今回は、愛犬に手作りドッグフードを与えたいと考えている飼い主さんや、手作りドッグフード初心者の為に、手作りドッグフードを作る上で知っておいてほしい手作りドッグフードの基本などについてご紹介致します。

その他、うちのトイプーでは犬の食事について幅広くご紹介しておりますので、興味がある方は【犬の食事カテゴリー】もご確認ください。

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手作りドッグフードの量と配分

愛犬の手作りドッグフードを作るとき、ドッグフードの量に悩むのではないでしょうか。

初めは多くの方が悩むと思いますが、量に関しては犬によっての個体差が大きいので計算式によって目安量を計算して、愛犬の様子を定期的に見ながら調整していきます。

手作りご飯の目安量を計算する場合は、1日にその犬に必要なエネルギー量を計算して決めましょう。

「エネルギー量の計算」と聞くと少し難しく感じるかもしれませんが、、1度計算してしまえば運動量や年齢を中心に、犬に変化がない限りは再度計算する必要がないため、是非計算してみてください。

犬の手作りドッグフードの量の計算方法

手作りドッグフードの目安量を計算する場合は、①犬の安静時のエネルギー量を計算して、②1日に必要なエネルギー量を計算します。

①犬の安静時のエネルギー量を計算

計算式|愛犬の体重 x 体重 x 体重=√√ x 70

10kgの犬(例)|10 x 10 x 10=√√ x 70 =393.63(安静時のエネルギー量= 394)

②1日に必要なエネルギー要求量を計算

計算式|①の結果 x 係数(下記)

10kgの去勢・避妊手術をしている犬(例)|394 x (係数)1.6 = 630.4(1日に必要なエネルギー要求量= 630.4)

<係数>

子犬

  • 年齢4か月前:3.0 
  • 5~9か月程度:2.0 

成犬

  • 未去勢・未避妊:1.8 
  • 去勢・避妊済:1.6 

老犬

  • 運動量が低下傾向:1.4 
  • 成犬時と比較して運動量が変わらない:1.6 

体重が多い犬

  • 肥満気味:1.4 
  • 確実な肥満:1.0 

全年齢・スポーツドッグなど

  • 運動量が多い:4.0 
  • 運動量が非常に多い:5.0~7.0

手作りドッグフードの配分

手作りドッグフードの配分に関しては、専門家などによって大きく見解が異なります。配分を考えるときに何より大切なことは、犬の年齢や健康状態に合わせて調整したり、便の状態を見ながら調整することです。

見た目の分量で考える場合

肉(1):野菜(1):炭水化物(0.3~0.5)

肉に関しては、肉の種類別の脂質の含有量に注意が必要。脂質の多すぎる肉を常用せずに鹿肉・ささみ・馬肉などを取り入れるなど、様々な食材を使用することをおすすめします。

野菜に関しては、人参やトマトをたくさん使用しているレシピを多い傾向にありますが、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の過剰摂取に注意し、様々な種類の野菜を取り入れましょう。

基本的には動物性タンパク質を主原料とし、様々な野菜をバランスよく摂取できる配分が理想です。

野菜は水分量が多いため、見た目の配分では「肉(1):野菜(1)」となっていますが、犬の手作りご飯は、肉(時々魚類)を主体として、野菜は種類を豊富に使用しましょう。

1日2食で、1食の緑黄色野菜が3種類以上、淡色野菜が2種類前後、キノコ類1種類、その他の野菜を配分目安とするなど、緑黄色野菜は必ず入れるようにして、淡色野菜やキノコ類なども取り入れると良いでしょう。

なお、脂質の少ない肉類や犬に与えて良い野菜について詳しく知りたい方は、下記のリンク先からご確認ください。

手作りドッグフードの基本!犬の5大栄養素

犬の体に必要な5大栄養素とは、タンパク質・脂質・炭水化物・ビタミン・ミネラルです。水を含めて6大栄養素と呼ぶこともありますが、ここでは5大栄養素としてご紹介いたします。

体の主な構成成分「タンパク質」

タンパク質は、犬の体の約20%程度、またはそれ以上の構成成分(人間の場合は約14~19%程度)であるため、犬の体に一番多く必要な栄養素であると考えられます。

ドッグフードで摂取したタンパク質は犬の体内に入って、アミノ酸として消化・吸収されますが、後に体の中で再度動物特有のタンパク質に合成されます。

タンパク質は、大きく分けて(※1)動物性タンパク質と(※2)植物性タンパク質の2つに分けられます。

犬の体は動物性タンパク質の消化を得意とするため、消化吸収性の良い動物性タンパク質を主原料として手作りご飯を作るのが基本です。

(※1)動物性タンパク質|肉や魚などに含まれるタンパク質
(※2)植物性タンパク質|米類・トウモロコシ・小麦などの植物に含まれるタンパク質

犬のエネルギー源となる「脂質」

脂質は、タンパク質や糖質と比較すると、1g換算で2倍以上のエネルギーを補うことのできる栄養素です。

特に、運動量が低下傾向にある老犬や肥満気味の犬などの手作りドッグフードでは、食事量の調整が必要ですが、発育中の犬や運動量の多い犬などには積極的に与えたい栄養素です。

また、脂肪は手作りご飯の香りが強まり犬の嗜好性が高まりやすいので、愛犬の食欲低下で悩んでいる飼い主さんは量を調整してみるのも良いでしょう。

犬の体にはそれほど必要ない?「炭水化物」

炭水化物は、糖質と食物繊維で構成されている栄養素で、犬の手作りドッグフードには不必要だと考える方もいます。

専門科によっても炭水化物の必要性に関しては意見が分かれますが、必要度合いは低いものの、やはり犬の手作りご飯には必要な栄養素です。

過剰な炭水化物を与えると、犬の消化器官に負担をかけたり太りやすくなるだけでなく、生理学的異常や病気の原因になることがあるため避けなければいけません。

しかしながら、アミノ酸(タンパク質)から犬の体に必要なグルコースを作り出すためには最低限の量が必要です。

欠乏症と過剰症に要注意!「ビタミン」

ビタミンは、犬の体の代謝過程や生態機能維持のために必要不可欠な栄養素ですが、種類によって欠乏症・過剰症に十分な注意が必要です。

ビタミンの種類は大きく分けて(※3)水溶性ビタミンと(※4)脂溶性ビタミンの2種類で、水溶性ビタミンは手作りご飯で不足しないよう注意が必要。

脂溶性ビタミンに関しては過剰に与えないよう注意が必要です。

(※3)水溶性ビタミン:ビタミンB1・B2・B3・B6・B12・C・パントテン酸・ビオチン・葉酸・コリン

特徴:体に蓄積しにくく多く与えても体外に排出されやすいが、その反面欠乏症に要注意

(※4)脂溶性ビタミン:ビタミンA・D・E・K

特徴:体で蓄積されやすいため、多く与えると過剰症になりやすいので要注意

犬に必要な「主要ミネラル」と「微量ミネラル」

ミネラルは40種類ありますが、犬の体に必要不可欠なミネラルは(※5)主要ミネラル7種類と(※6)微量ミネラル11種類です。

ミネラルは種類によって体への働きが異なり、体の組織・体液・器官などの構成要素となるものが数多くあるので、バランスよく手作りドッグフードに取り入れる必要があります。

なお、犬の手作りドッグフードにおいては、ビタミンとミネラル類のバランスが崩れやすいので、極力いつものご飯にトッピングにすることをおすすめします。

(※5)犬に必要不可欠な主要ミネラル|カルシウム・マグネシウム・リン・カリウム・ナトリウム・イオウ・塩素 
(※6)犬に必要不可欠な微量ミネラル|鉄・亜鉛・銅・ヨウ素・セレン・ホウ素・フッ素・クロム・コバルト・モリブデン・マンガン

愛犬に手作りドッグフードを作るメリット

ここでは、手作りドッグフードを愛犬に与えることによるメリットをご紹介します。

旬の食材を味わえる

手作りドッグフードを作る事で、愛犬に旬の食材を与える事ができます。また、新鮮な食材を与えられるのも、ドッグフードを手作りするメリットです。

愛犬と共に、旬の食材を味わい季節を感じられるのは、飼い主さんにとって非常に嬉しいことでしょう。

水分を多く摂取できる

手作りのドッグフードは、食材から出る栄養素が含まれた水分も余す事なく与える事が可能です。

ドッグフードとして多くの方が与えている「ドライフード」と比べ、多くの水分を食事から摂取でき、脱水防止や老犬に効果が期待できます。

愛犬の体質に合わせられる

飼い主さんが食材を選ぶことができるため、愛犬のアレルギー食材を避けたり、愛犬の体質に合った食材を与える事ができます。

犬にも好みがあるため、愛犬の好みに合わせたドッグフードを作れるのも魅力の1つです。また、愛犬の年齢や病気に合わせてレシピを考え、栄養バランスを調整できます。

安心して与えられる

手作りドッグフードは、添加物などを避けられるので、愛犬の健康を気にする飼い主さんにとって、栄養バランスさえしっかりと配慮すれば、安心して与えられるのは大きなメリットでしょう。

愛犬に手作りドッグフードを作るデメリット

近年インターネット上に、犬の手作りドッグフード初心者の方々のレシピが非常に多く出回っておりますが、中には偏った栄養バランスのレシピもあります。

おやつ感覚で与える手作りドッグフード・少量ドライフードにトッピングするための手作りドッグフードであればそれほど問題ありません。

しかし、愛犬の健康維持・病気の進行制御などを目的として、総合栄養食ドッグフードのように継続して犬に与える目的で作るのであれば、栄養バランスの偏ったレシピを参考にするのは危険です。

愛犬のために時間をかけて手作りドッグフードを作るのであれば、犬の健康に悪影響を及ぼさないよう、手作りドッグフードで不足しやすい栄養素を知っておきましょう。

不足しやすい栄養素:①カルシウム

手作りドッグフードの中で不足しやすい栄養素は「カルシウム」です。犬は、人より多くのカルシウムを摂取する必要があります。

カルシウムは歯や骨など骨格だけではなく、細胞の神経刺激や情報の伝達にも大きく関係し、どのライフステージでも欠かせない栄養素です。

犬のカルシウム不足は、骨折などの骨に関するトラブルを引き起こしやすくなるだけでなく、腎臓などに負担がかかる恐れがあり、とても危険です。

犬の体内には、血中のカルシウムの濃度を一定に保つ機能があり、カルシウムが不足するとカルシウムを多く含む骨からカルシウムを取り出し、濃度を一定に保ちます。

そのため、カルシウム不足が続くと骨が脆い状態になってしまい、骨折などを起こしやすくなるのです。

また、カルシウムを摂取する場合は、リンの摂取もバランス良く摂取する必要があり、一般的にカルシウムとリンの比率は1:1から1:2の間が良いと言われています。

リンは、肉類・魚介類に豊富に含まれているため、それらの食材をメインとした手作りドッグフードを与えている場合は、積極的に摂取する必要はないでしょう。

なお、カルシウムを多く含む食材を詳しく知りたい方は、下記のリンク先からご確認ください。

不足しやすい栄養素:②チアミン(ビタミンB1)

チアミンは加熱により壊れる栄養素なため、加熱調理をした手作りドックフードを食べている犬は不足しやすい傾向にあります。

また、生の魚に含まれる「チアミナーゼ」というチアミンを分解する酵素を摂取するのもチアミン不足の原因です。

そのため、愛犬に魚類を与えるときは刺身などではなく、火を通したものを与えるようにしましょう。

なお、チアミンを多く含む食材を詳しく知りたい方は、下記のリンク先からご確認ください。

不足しやすい栄養素:③ヨウ素

ヨウ素は、犬が不足しやすい栄養素の1つです。ヨウ素不足は、甲状腺機能低下症を発症する恐れがあるため、ヨウ素を豊富に含む海藻類を食材として使用しましょう。

なお、ヨウ素を多く含む食材を詳しく知りたい方は、下記のリンク先からご確認ください。

愛犬の健康にために手作りドッグフードを作ろう!

今回は、手作りドッグフードを作る上で知っておいてほしい手作りドッグフードの基本などについてご紹介いたしました。

「愛犬が健康で長生きできるように」という想いから、愛犬のために手作りでドッグフードを作ってあげたいと考えている事でしょう。

栄養バランスやアレルギーなどに注意して、手作りドッグフードを作ってあげれば、愛犬も健康で長生きしてくれるかもしれません。

そして、愛情を込めて愛犬のために手作りドッグフードを作れば、愛犬も喜んでくれるでしょう。

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監修者:望月 紗貴

うちのトイプー開発責任者。犬の管理栄養士、愛玩動物救命士、ペット看護士資格、ペット介護士資格、ペットセラピスト資格、ドッグトレーニングアドバイザー、ドッグヘルスアドバイザー、その他上級食育士、アレルギー対応食アドバイザーなど、数多くの資格を保有。過去にドッグトレーナーとして働き、現在は愛犬ゴールデンレトリバー、ドーベルマン(元保護犬)、ボルゾイ、ボーダーコリー、愛猫3匹と暮らす。愛犬バーニーズマウンテンドッグの腫瘍発覚後から、長年の間犬の生物学を学ぶ。

公式HP:https://true-dog-lover.com/

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