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犬のニキビダニ症は、決して珍しい皮膚病ではありませんが、愛犬の痒がる姿に「何とかしてあげたい」と頭を悩ませる飼い主さんは少なくありません。
犬がニキビダニ症になる原因はさまざまで、原因に合わせた治療法を行わなければ、痒みや痛みによるストレスでますます悪化させてしまうことに・・。
今回は、愛犬の皮膚に異常がある飼い主さんや、現在治療を行っている飼い主さんのために、犬のニキビダニについて原因や症状、治療法をご紹介します。
なお、愛犬が痒がる原因などを詳しく知りたい方は、【犬が痒がる原因は?考えられる病気】をご確認ください。

犬のニキビダニとは?

犬のニキビダニは犬の毛穴に常在しているダニで、体長が0.2~0.3mm前後と小さいため、目で見ることはできない微生物です。
ニキビダニは、子犬が母犬から母乳を飲んでいるときに、母犬からニキビダニが子犬に移行して毛穴に住み着きます。
そして、ニキビダニは普段は毛包内でひっそりと皮脂を食べて暮らしていますが、何らかの原因によって過剰に繁殖してしまうと、犬に皮膚症状を引き起こし、ニキビダニ症となります。
ダニと聞くと、人にうつるのではないかと心配になる飼い主さんもいるかもしれませんが、犬がニキビダニ症を発症しても人にうつることはないため、その点は安心してください。
また犬のニキビダニ症は、アトピー性皮膚炎や他の皮膚病と診断されてしまうこともあり、愛犬の皮膚病がいつまで経っても治らないときは、獣医師に皮膚病理検査の相談をしてみましょう。
なお、アトピー性皮膚炎について詳しく知りたい方は【犬のアトピー性皮膚炎の症状や治療法、ケア方法など】をご確認ください。
犬のニキビダニが人にうつることはない理由
ニキビダニは「毛包虫」「顔ダニ」「デモテックス」「アカラス」とも呼ばれ、人を含む哺乳類の毛穴に常在しているダニですが、ニキビダニにも種類があり、犬には犬、人には人のニキビダニが存在します。
ニキビダニは、特定の限られた種のみを宿主とする生物なため、犬のニキビダニが種の違う人にうつるということはないので、過度に心配はしなくても大丈夫です。
また、母犬から子犬にニキビダニがうつることはありますが、通常はほかの犬や猫にうつることはありません。
犬のニキビダニ症が他の皮膚病と診断されてしまう理由
犬のニキビダニは、人の目で見ることができないほど小さいため、犬の皮膚を見ただけではわかりません。
犬のニキビダニ症の検査は、犬の毛の根元にニキビダニが付いていないかを、毛を抜いて顕微鏡で確認する「抜毛検査」や、皮膚の表面を少し削って顕微鏡で確認する「掻爬検査(そうはけんさ)」などが一般的です。
しかし、毛穴の奥深くにいる場合では、発見することができないこともあり、「皮膚病理検査」をしなければ判断できないこともあります。
そのため、他の皮膚病と診断されてしまうことがあることを覚えておきましょう。

犬のニキビダニの原因と症状

ニキビダニは、どんな犬の毛穴にも常在していますが、過剰に繁殖してニキビダニ症を発症するのはどんな原因があるのでしょうか。
ここでは、犬のニキビダニの原因と症状について、犬のライフステージ毎に詳しくご紹介します。
ニキビダニ症になる原因と症状:子犬編
<主な原因>
- 皮膚の免疫機能が未発達
- 環境の変化
- 栄養失調
- 避妊・去勢手術などの一過性のストレスによる免疫力の低下
※一過性ストレス:短い期間のみかかるストレス。
<主な症状>
- 毛包の炎症
- 皮膚の赤みや発疹
- 皮膚の色素沈着
- 顔面の毛が薄くなる
- フケ
- 脱毛
皮膚の免疫機能が十分に発達していない子犬の時期は、ニキビダニ症を発症しやすく、子犬にとても多い病気です。
子犬のニキビダニ症は、痒みを伴わないことも多く、症状も軽度で局所的という特徴があります。
犬が生後18ヶ月未満でニキビダニ症を発症した場合、成長するにつれて免疫機能も発達するため現れている症状が軽くなっていくことが多いです。
ニキビダニ症になる原因と症状:成犬・老犬編
<主な原因>
- 発情
- 妊娠
- ストレス
- ワクチン摂取
- 外科手術などの一過性ストレスによる免疫力の低下
- ステロイド剤や免疫抑制剤などの服用
- 免疫力を低下させる疾患(腫瘍・甲状腺機能低下症・糖尿病・クッシング症候群など)
- 老化
<主な症状>
- 毛包の炎症
- 発疹
- 脱毛
- 膿包
- 出血
- 血液の混ざったカサブタ
- 痒みや痛み
- 発熱
- リンパ節腫脹
成犬や老犬がニキビダニ症を発症すると、症状は重く、全身に広がってしまうことも少なくありません。
細菌や真菌の二次感染や他の皮膚病を併発してしまうことも多く、合わせて治療が行われます。
二次感染を引き起こしてしまったときは、全身が化膿したりかさぶただらけになる前に対処してあげないと、最悪の場合は「敗血症」を起こして命に係わることにもなりかねません。
そのため、きちんと治療を受けさせてあげるのと同時に、愛犬の皮膚の変化にすぐ気づけるようにしておきましょう。
なお、カサブタの原因などを知りたい方は【犬のかさぶたの原因や考えられる病気とは?】も合わせてご確認ください。

犬のニキビダニの治療法

犬のニキビダニ症の治療法は、皮膚の症状や基礎疾患によって異なります。
ここでは、一般的な犬のニキビダニ症の治療法(一例)をご紹介します。
ニキビダニ症の治療法(一例):子犬編
子犬のニキビダニ症は、皮膚の免疫機能が未発達なことによって引き起こされることがほとんどのため、症状が局所的で軽い場合は、食事内容の変更や散歩時間を充実させ、経過観察を行います。
症状が子犬の全身に現れている場合や、症状が重症化している場合では、ニキビダニの駆虫薬を毎週1回注射をする、駆虫薬の内服や外用薬を使用するなどを組み合わせて1ヶ月~数ヶ月の治療が必要です。
また、専用のシャンプー剤を使用して、24時間ごとにシャンプー療法を行う必要があります。
なお、愛犬の皮膚に関係する免疫力について詳しく知りたい方は【愛犬に免疫力を高める生活を!トイプードルの皮膚と免疫力の関係】をご確認ください。
ニキビダニ症の治療法(一例):成犬・老犬編
成犬や老犬のニキビダニ症の治療法は、ニキビダニ駆虫薬を毎週1回注射をするか、駆虫薬を内服する、外用薬を使用するなど組み合わせて1ヶ月~数ヶ月続けます。
他にも、専用のシャンプー剤を使用して、週に2~3回のシャンプー療法が必要です。犬の全身にニキビダニ症の症状が現れている場合では、抗生剤を使用する場合もあります。
また、二次的な細菌感染などがあれば、それに合わせた治療薬を併用し、他の皮膚病や免疫力の低下を引き起こす基礎疾患がなどが原因の場合は、それらの治療も同時に行います。
犬の皮膚の状態や症状によっては、長毛種の犬では全身の毛を剃られてしまうこともありますが、悪化させないための処置であることを理解しておきましょう。
犬のニキビダニ症を治療をするときに注意するPoint
犬のニキビダニ症の治療をするときは、注意しなければいけないこともあります。
Point1:治療を途中でやめない
犬のニキビダニ症は、途中で治療をやめてしまうと再発も多いほか、なかなか治らない場合は、他に疾患が潜んでいないかを確認するために全身の検査も必要になることがあります。
犬のニキビダニ症は、治療が長期間に渡ることがほとんどですが、愛犬のためにも諦めずにじっくり、獣医師と二人三脚で治療に取組みましょう。
Point2:自己判断で治療薬を使用しない
犬がニキビダニ症を発症すると、「愛犬が痒がる姿を見ていられない」などの理由で、市販の痒み止め治療薬や痒み止めのシャンプー剤を使用する飼い主さんもいます。
ニキビダニ症では、注意して使用しなければ逆に悪化させてしまう薬もたくさんあるため、自己判断で治療薬を購入して使用することは絶対にやめましょう。
愛犬の皮膚に異常が見られたり、ニキビダニ症の症状が現れている場合は、必ず動物病院を受診してください。
犬のニキビダニ症の対策
犬のニキビダニ症の治療薬に使用されるニキビダニ駆虫薬は、フィラリア予防に使用される駆虫薬と似た成分です。
近年では、経口タイプのノミダニ駆除薬がニキビダニの治療薬や予防効果があるとして注目されています。
こちらも最近はネットなどで購入することもできますが、体重によって与える量が違うことや、犬の状態によっては使用できないこともあるため、自己判断で使用するのは危険です。
そのため、犬のニキビダニの対策を考えている飼い主さんは、必ず獣医師に相談し、動物病院で処方してもらいましょう。
獣医師と相談しながら決めていこう!

今回は、犬のニキビダニの原因や症状、治療法についてご紹介しました。犬がニキビダニ症を発症しても人にうつることはありません。
なぜなら、ニキビダニ症の原因は免疫力の低下によるものがほとんどのため、皮膚が汚い、ニキビダニがいるという理由で愛犬を避けるのはやめてくださいね。
愛犬が不安やストレスを感じると、免疫力の低下を助長させてしまう恐れがあります。ストレスはニキビダニをはじめ、さまざまな病気を引き起こす要因の1つです。
愛犬のストレスが最小限になるように配慮してあげると共に、ニキビダニ症の治療法や治療薬は獣医師と相談しながら決めていきましょう。
なお、愛犬の健康を守るために欠かせいなケア方法について詳しく知りたい方は【犬のケア方法カテゴリー】も合わせてご確認ください。


うちのトイプー記事作成担当。ペットフーディスト、動物介護士、ペット看護士、ペットセラピスト、トリマー・ペットスタイリスト、JKC愛犬飼育管理士の資格を保有。虹組愛犬の介護をきっかけに犬の健康や介護の在り方について考えるようになり、わんこのスペシャリストを目指して日々勉強中。17歳のMダックスと16歳のチワックスと暮らす。

うちのトイプー開発責任者。犬の管理栄養士、愛玩動物救命士、ペット看護士資格、ペット介護士資格、ペットセラピスト資格、ドッグトレーニングアドバイザー、ドッグヘルスアドバイザー、その他上級食育士、アレルギー対応食アドバイザーなど、数多くの資格を保有。過去にドッグトレーナーとして働き、現在は愛犬ゴールデンレトリバー、ドーベルマン(元保護犬)、ボルゾイ、ボーダーコリー、愛猫3匹と暮らす。愛犬バーニーズマウンテンドッグの腫瘍発覚後から、長年の間犬の生物学を学ぶ。