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犬を飼い始める際の心配事の1つとして、病気があります。
その病気の中には、生まれつきの問題が病気の原因となる「先天的疾患」もあります。
今回は、人気の犬種であるトイプードルにみられる先天的疾患について解説していきます。
先天的疾患の中には、成長の過程で病気の存在が明らかになってくることもあります。
そのため、トイプードルをお家に迎えてからも、成長状態に問題がないかしっかりと様子を見ていく必要があります。

トイプードルは病気に強い?

トイプードルにも起こりやすいと言われる先天的疾患がいくつかあります。
先天的疾患含め病気には好発犬種と言って、その病気になりやすい犬種が報告されています。
トイプードルは目の病気、関節の病気などのいくつかの先天的疾患の好発犬種に入っています。
犬の先天的疾患とは?

先天的疾患には、染色体、遺伝子上の異常が原因である遺伝性疾患や、母犬のお腹の中で成長する過程での問題による病気があります。
遺伝による先天的疾患は、親犬が病気の素因を持ってることで子供の犬にその病気が遺伝することがあります。
交配を行う親犬に先天的疾患の素因がないかを調べる遺伝子検査もあり、こうした検査を行った上で交配に臨むことで先天的疾患を未然に防ぐことも可能です。
しかし、全ての病気を交配、出産前から把握しきることは不可能です。
そのため、生まれてきた子犬の身体、体調をしっかりと見ることが大切です。
トイプードルに多い先天的疾患一覧と一般的な治療法

それでは、トイプードルが好発犬種となっている具体的な先天的疾患を見ていきましょう。
進行性網膜萎縮
トイプードルが好発犬種となっている先天的疾患として、まず進行性網膜萎縮症が挙げられます。
網膜とは眼を構成する要素の1つです。
網膜は光を受け取り、それを神経信号に変換し、脳に送るという視力に関わる重要な働きを持っています。
そのため、この網膜が障害されることで視力の低下ないし、失明に繋がります。
進行性網膜萎縮症が発症すると、早い犬では生後数か月から視力の低下が始まり、数か月から数年かけて失明へと至ります。
始めのうちは、暗い所で物にぶつかりやすいなどの様子が現れます。
残念ながらこの病気の治療法は、確立されていません。
この進行性網膜萎縮症は、親犬から子犬へと遺伝する病気であるとわかっています。
そのため、この先天的疾患の素因のある犬を交配に使用しないことで病気を未然に防ぐことが最も重要になります。
もし、この病気を発症してしまった場合、白内障やそれに続発して緑内障、ブドウ膜炎といった別の目の病気に繋がる恐れがあります。
生活環境の整備や他の目の疾患が起きないかの検診を行うことが重要です。
水頭症
水頭症とは、脳の中の脳室と呼ばれる部位に脳脊髄液という液体が過剰に貯留することで生じる先天的疾患です。
貯留した液体により、脳が圧迫されることで萎縮してしまい、脳のはたらきが阻害されてしまいます。
上手く歩けないなどの運動障害や、ぼーっとしてしまう等の意識障害、発育不良が症状として現れ、他にもてんかん発作が起こることもあります。
先天的なものだと、通常1歳以下の若齢期に発症します。
治療としては、脳を圧迫してしまう脳脊髄液の産生を抑えるための薬の使用や、てんかん発作を起こす犬に対して発作止めの薬を使用することが必要になります。
この病気は、トイプードルだけでなく、ポメラニアンやチワワも好発犬種となっています。

ガングリオシドーシス
ガングリオシドーシスも、トイプードルで起こりやすい脳の先天的疾患です。
ガングリオシドーシスとは、GM1ガングリオシドーシスあるいはGM2ガングリオシドーシスという物質が脳に蓄積することで進行していく、脳性神経の変性を伴う病気です。
多くの場合は、1歳以下の若齢期に発症します。
症状としては、運動失調、痙攣、視覚障害など神経に関わる問題が生じてしまいます。
この先天的疾患についても治療法は確立されておらず、発症後は死に至る病気になっています。
トイプードル以外にも柴犬、ビーグル、ゴールデン・レトリバーでも発症しやすいと言われています。
膝蓋骨脱臼
膝蓋骨脱臼も、トイプードルを始めとする小型犬全般で多くみられる病気です。
膝蓋骨とは、いわゆる膝のお皿になります。
本来であれば、大腿骨(太ももの骨)にある溝に収まっているこの膝蓋骨が、溝から外れて脱臼してしまう病気です。
この膝蓋骨脱臼はある程度の年齢を重ねてから出てくる犬もいれば、生まれつき大腿骨の溝が浅く外れやすい犬もいます。
軽度なものだと明らかな症状が確認しにくいこともありますが、重度なものだと脱臼した側の後ろ足に体重をかけれなくなります。
そのため、足を床につけない、後ろ足を庇った歩き方にする等の症状が現れます。
また、このような症状が長期間に渡って続くと後ろ足の筋肉量に差が出てくるなどの変化も生じます。
膝蓋骨脱臼から、前十字靭帯という足の骨を繋ぐ靭帯にダメージを与えてしまうこともあります。
治療としては、軽度であれば悪化を防ぐためにサプリメント等によるコントロールを行います。
脱臼の程度が酷いあるいは前十字靭帯が断裂してしまっているような場合だと、外科手術にて整復を行うことが必要となります。
なお、膝蓋骨脱臼についての詳しい情報は【膝蓋骨脱臼の症状や予防法】をご確認ください。
レッグぺルテス病(大腿骨頭虚血壊死)
レッグぺルテス病とは、大腿骨と骨盤を繋ぐ関節部分での血の流れが悪くなることで骨に壊死が起きてしまう股関節の病気です。
壊死が起きている側の肢に体重をかけられないことで、歩き方に異常が生じます。
片側のみに症状が出ることが多いですが、時に両股関節に障害が出ることもあります。
治療としては、消炎鎮痛剤の服用や運動制限を行うことで悪化を防ぐことや、外科手術を行うといった方法があります。
外科手術後はリハビリテーションを合わせて行うことで、よりスムーズな回復が狙えるでしょう。
レッグぺルテス病は、トイプードルに加えミニチュア・ピンシャーも好発犬種となっています。
門脈体循環シャント
トイプードルの先天的疾患として、門脈体循環シャントという病気もあります。
これは、門脈という肝臓への血管と、全身からの血液を心臓に返す血管に連絡通路が出来てしまう病気です。
本来これらの血管は繋がることがないのですが、この病気ではシャント血管と呼ばれる連絡通路により繋がりが生じてしまいます。
肝臓で代謝されるはずの血液中の老廃物等が直接全身を回ってしまうことで、症状が現れます。
毛ヅヤの悪さや発育不良、食欲不振、嘔吐等が認められます。
さらに、重度のものだと老廃物の影響が脳にまで出てしまう肝性脳症という病気に繋がり、意識障害や発作が起きてしまうこともあります。
治療に関しては、外科手術により連絡通路となっている血管を塞いでしまう方法があります。
トイプードルの平均寿命

トイプードルの平均寿命は、15歳前後と言われています。
近年、獣医療の発展とともに犬の寿命も伸びている傾向にあり、トイプードルの中には18歳くらいまで長生きする子もいます。
トイプードルは小型犬の中でも長生きする犬種と言われており、実際に世界では、20歳以上生きたトイプードルの報告もあります。
トイプードルの病気早期発見には定期的な検診が必須!

上記で説明したようにトイプードルの先天的疾患は種類、症状が多岐に渡ります。
こうした先天的疾患が出ないように遺伝子検査を行ったうえで繁殖を行うブリーダーやペットショップも増えているので、犬を飼う際は問い合わせてみるのも良いでしょう。
また、家に迎え入れてからも子犬の時期に動物病院で検診を行うなど隠れた病気がないか定期的にみていくことも重要です。
なお、トイプードルの基本情報については【トイ・プードルについてトイプー専門家が詳しく解説!】をご確認ください。


現役の若手獣医師。田舎の動物病院にて日々多くの動物の診療を行なっている。
獣医師公式サイト:https://awesome-vet.com/

うちのトイプー開発責任者。犬の管理栄養士、愛玩動物救命士、ペット看護士資格、ペット介護士資格、ペットセラピスト資格、ドッグトレーニングアドバイザー、ドッグヘルスアドバイザー、その他上級食育士、アレルギー対応食アドバイザーなど、数多くの資格を保有。過去にドッグトレーナーとして働き、現在は愛犬ゴールデンレトリバー、ドーベルマン(元保護犬)、ボルゾイ、ボーダーコリー、愛猫3匹と暮らす。愛犬バーニーズマウンテンドッグの腫瘍発覚後から、長年の間犬の生物学を学ぶ。